iker's blog

気ままに更新

スリランカのコロンボマラソンに出てみよう<その2>

その1はこちら

スタート

スタート地点で見つかるか心配だった荷物預かりの車は、スタッフに聞いたらすぐわかった。仮設トイレは見た感じ3基ほどであったが、日本の大会ほど混んでおらず、30分前なのにほぼ待たずに入れた。

スタートは5km、10km、ハーフ、フルと全て同時である。ここで重要なのが、ゼッケンのチェックである。この大会はなにせチップがない。スタート地点でしっかりゼッケンをチェックしてもらわないと、失格の可能性すらある。"full marathon men"と叫びながらチェックするスタッフを必ず見つける必要がある。なお、不正を防ぐためコースの途中にもチェックのスタッフがいる。
スタートはやはり6:00ぴったりではなく、カウントダウンもなく、偉い人の紹介が終わって気を抜いた瞬間に突然「パン」。その様子がこちら。まるで競馬のようだ。

幸いスタート地点の幅は広いため、そこまでの混乱はない。しかし、5kmに出る子供達はメチャクチャなペースで走り出し、すぐに歩き出す。惑わされないようにすることが大切だ。


前半~中盤

スタートからしばらくは交通規制があるが、それもきっちりは行っていないため、ランナーの隣をトゥクトゥクが追い抜いていったりする。
5km、10kmと過ぎるとほぼ交通規制はなくなる。陸橋がある以外は平坦だが、路面の状態は悪い上、前日の大雨のせいで水溜まりが多い。
事前の情報通り、補給は水のみ。ただ、ありがたい事にペットボトルをくれるため、時間をかけながら量を飲むことができる。ペットボトルは5km地点から5kmごと、スポンジは7.5kmから5kmごとにある。
この日は前日の大雨から天気は回復したが、湿度と気温は朝から高かった。すぐに全身が汗で覆われた。暑さのせいかペースが上がらないが、私は補給食も携帯しなかったため無理に上げずに余力を持って走った。
ハーフを過ぎるといよいよ孤独との戦いである。まずサブ3.5くらいのペースだとランナーはまばらでほぼ順位変動がない。

f:id:iker:20181012200539j:plain

地元の人は何人か応援してくれる人はいても、基本的に無関心である。使い終わったスポンジを投げるとそれを拾うことには気が向くが、ランナーに声をかける人はかなりの少数派だ。

f:id:iker:20181007092511j:plain

優勝したJames Tallam選手の力強い走りすら、誰も見ていなかったようだ。
怖い思いをしたのは犬である。勿論リードに繋がれていないため、私も2度ほど吠えられた。一度は噛まれるかと思った。

後半

35kmを過ぎてからも、私は前半余力を残しておいたおかげでイーブンペースを保てた。暑さで脚が完全に止まったり、スピードが極端に落ちた選手を捉えるようになった。勿論こちらとて精神的にも体力的にも本当に厳しく、余力はなかった。
ゴールに向けては人口が多いところを通るため、人の横断やら車やトゥクトゥクに更に神経をとがらせる必要があった。

f:id:iker:20181012200726j:plain

この国では歩行者の地位がとても低い。ランナーだろうと容赦なくクラクションを鳴らされる。ただ、この国のクラクションの意味合いは恐らく日本とは違う。普段からしょっちゅう鳴らしまくるためあまり気にする必要はないのだろう。
歩行者、車、トゥクトゥクに気をつけていたら、苦しいところで自転車青年が登場。興味を持って話しかけてくれたのだが、ありがた迷惑で困った。どこから来たの?あなたがトップ?水を持ってこようか?いや、ありがたいが頼むから喋らせないでほしい。
40kmからは市街地に入るが、他にランナーがいないため、コースが合っているかの不安も出てくる。基本的に案内がなければ道なりに太い道を進むのが正しい。

ゴール

やっとの思いで最後の角を折れると、多くの人から拍手が。ゴールテープを切ると、コースに一礼する間もなくスタッフに抱えられてレスト用のマットへ。タイムは3:20:59。あれ?スタッフの誘導があるということはこのタイムなのに私入賞した?と思ったら男子28番とのカードを渡された。何番手であろうと、フィニッシャーは手厚くもてなしを受けるようだ。靴紐を緩めてくれて飲み物を持ってきてもらった。
なお、Tシャツとメダルはこの時点では貰えない。11時半からのセレモニーでもらえると説明を受けた。私はホテルに戻る必要があったため、これは諦めるしかないと考えたが、最終的に先に貰うことができた。記録証も出るが、チップがないため手書きである。私は記録を入れてもらわなかったが、同じ宿のインド人は自分で申告したタイムを書いてもらっていた。これもこの大会ならではだ。

f:id:iker:20181012203134j:plain

コースはほぼ北に42kmのワンウェイだが、帰りの送迎はない。スタート地点近くに宿をとった私は、PickMeというスリランカUBERで高速代込み約2400ルピー(約1600円)で1時間強かけて戻った。
ゴール後に地元のランナーからは、「ゴール地点のネゴンボにも宿がたくさんあるため、宿のシャワーを借りれば良いのではないか」と言われた。確かにもう一泊できるなら、セレモニーにも出て海沿いの宿で一泊というのが良いのかもしれない。また、一泊しなくてもシャワーと着替えをさせてくれという交渉を事前にしておくというのも一つのアイデアだろう。ネゴンボであればコロンボ市街より空港にも近い。

総括とアドバイス

様々な面で厳しい大会だったが、水だけであの暑さの中、そして他のランナーがほとんど見えない中、イーブンペースでフルを走りきれたというのは自信になった。こんな体験はなかなかできないだろう。私は個人的に海外マラソンには異文化を感じながらも、「走る」という共通の言語で繋がっていることに面白さを感じている。従って今回の体験も行き届いていない部分も含めて、最終的に異文化を感じながら世界各地のランナーと走れてとても楽しめた。
異文化といえば、裸足ランナーの確率の高さにも驚かされた。女子ではトップ10の賞金圏に裸足ランナーが入っていた。

f:id:iker:20181012204242j:plain

私の結論として、海外マラソンが好きな方にはこの大会を是非お勧めしたい。今後出られる方のために私からのアドバイスは以下の通りである。
 
  1. スリランカは英語がほぼ通じるので、わからないことは積極的に事務局にメールで問い合わせるなり、オフィシャルのFacebookに聞くなりしたほうが良い。
  2. お金を持って走る方が良い。私は結局使わなかったが、途中でバナナを買って食べるのはハンガーノックを防ぐ有効な手段だと思う。
  3. 私のように水以外補給無しで臨む覚悟であれば、朝食前の30km走などで脂肪だけをエネルギー源として走る練習をしておくのが有効だと思う。
  4. 雨のレースを覚悟すべし。私は幸いレース中に降られなかったが、前日とレース日の夕方は雨に見舞われた。
 
今回の記事では、コロンボラソンの事務局から、フォトギャラリーの素材の使用許可を頂いた。寛大な対応に感謝申し上げたい。
決して割合は高くなかったが沿道で応援してくれた地元の人、厳しい大会を一緒に走ったランナー仲間、ボランティアなどこの大会に関わったすべての方にも感謝申し上げたい。
そして何より安全な環境でマラソンができるようになったことに感謝したい。タミル人や他の少数派の人種にとっては望んだ形の社会ではなかったかもしれないが、これからも普通にマラソンを楽しめる平和な社会が続くことを祈りたい。