オスロトリプルはおすろしい<その1:レースまで>
フルマラソンを走り終えたあとにすぐ次のレースを考えるなどということは、ごく一部の意識が高いランナーのすることだと思う。だが参加者全員がそれを考える、おそらくは多くがフルマラソンを走りながらも次のことを考える。しかもその「次のレース」のハーフマラソンは1ヶ月後でも1週間後でもなく、1時間後とか10分後とかにやってくるのだ。更にハーフマラソンが終われば今度は10kmのレースが用意されている。
そんな馬鹿げたチャレンジがオスロトリプルである。
きっかけ
大学時代のサークルの友人が結婚してノルウェーに移住し、以前からまあ難しいだろうと思いながらも、遊びに行きたいねなんて話をしていた。それが現実味を帯びたのは、海外マラソンに参加するようになり、見知らぬ土地でのマラソンに興味を持つようになったからだ。
友人から3月に来日するので会いたいと連絡をもらったとき、ふとノルウェーでマラソンなんて面白いのではないかと考え始めた。候補の大会として、オスロマラソンを見つけたのは比較的すぐだった。しかし、ハーフのコースを2周するというコースプロファイルが気に入らず、当初はあまり乗り気ではなかった。同じ週末に開催されるヘルシンキのマラソンは海沿いを走るコースで、こちらの方が魅力的に映っていた。
友人にマラソンを絡めてノルウェーに遊びに行きたいと伝えたところ、快く歓迎してくれた。友人が住んでいる街の場所、日程、日本からのフライト条件などを総合的に考えると、どうもオスロが都合が良いことが分かった。周回コースはつまらないけどまあ仕方ないと思いながら参加を決めたのだが、オスロマラソンのサイトを見ていたときに、迂闊にもそれを見つけてしまったのだ。
オスロトリプル
オスロトリプルとは、オスロマラソンで設定されている3種目、即ちフル、ハーフ、10kmの合計73.3kmを1日で走るというものだ。
これに興味を抱いてしまった私は、まずgoogleでこのレースのレポートがないか探してみた。そこでたどり着いたのが、アメリカ人の方が書いたこのレポートである。
レースレポートとしてはかなりの完成度で、内容がまた面白くて本当に楽しい記事なのだが、この中の一文がとても胸に刺さった。
I didn't want to get there and regret not signing up(会場に行ったとき、エントリーしなかったことを後悔したくなかった)
なお、まさか日本語のレポートがあるとは思わず、見つけたのが後になったが、こちらも面白おかしくレースの様子を描いた秀逸なレポートで、大いに参考にさせてもらった。
私は2年前にロードのフルで勝負すると決めて以来、なるべく海外でもフルに専念したいと考えるようになっていた。しかしながら今回は好奇心と、アメリカ人ランナーの「後悔したくなかった」の言葉に抗うことは出来なかった。私は愚かにもトリプルをポチってしまったのだ。
参考までに、私が支払ったオスロトリプルのエントリー費用は1,995ノルウェークローネだ。およそ27,000円、保険やTシャツを足したら3万円を超えた。参加費はエントリーするタイミングによって異なり、2018年大会の場合、2017年12月31日までが1,595kr、2018年3月31日までが1,995kr、それ以降は2,495krであった。
事前準備
この大会の開催は9月15日である。例年の私は、9月最終日曜の越後湯沢コスモスマラソンをロードの開幕戦としており、ピークを11月の大会に持っていくようにしていた。しかし今年に限っては9月の時点である程度走れる体にしておかないと、とてもオスロトリプルを成し遂げることはできない。そこで今年は近年避けていたトレランに挑むことにした。6月に試走会と大会を1度ずつ、7月には50kmの大会を入れた。
6月の試走会と大会の後は強烈な筋肉痛に襲われたが、7月の50kmの大会は自分としてはかなり走れたほうで、筋肉痛もさほど来ず、確実にオスロのアップダウンに対応する体になったことを実感した。
しかし7月、8月の週末の悪天候は誤算だった。この期間に2回か3回テント泊の登山に行きたかったのだが、1回しかできなかった。また、お盆期間中に計画した女峰山〜男体山のトレランは、出発の朝にハイドレーションの漏れが見つかり断念することとなった。
ロードのトレーニングは勿論こなしたが、やや不安を残すこととなった。
オスロトリプル一週間前の9月9日に前哨戦として八ヶ岳ロードレースというハーフに出たものの、タイムは全く伸びず、トレランで作った筋肉は落ちており、筋肉痛もかなり来た。この結果に不安がさらに膨れ上がったのは言うまでもない。
レース直前
コペンハーゲンや、友人が住むトロンハイムを経由して、オスロについたのは前日の夜だった。受付はオスロに住むという友人の親戚に代理でお願いした。
今回の宿はドミトリーだがスタート地点から徒歩5分。宿泊費はおよそ5,000円。同じ部屋の宿泊客はみんな朝が遅くて気を使ったが、物価の高いオスロ中心街でこの価格は助かった。食べ物も高いので、朝食の充実ぶりを考えると、本当にお得な宿であった。
レース当日の朝食は宿のビュッフェでパンを中心にカーボローディング。朝食を終えて外に出てみると、天気は見事な晴れ。
すでに交通規制が敷かれた中スタート地点に向かうと、すぐにトリプルランナー専用テントが見つかった。
筋肉痛はなんとか消えている。体調も悪くない。あとはやるだけだが、どれだけやれるかは全く想像がつかなかった。
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